韓国 老巨樹探訪 松廣寺の雙香樹に誘われて

 平成26年4月10日、蘂だけになったサクラを車窓から眺めながら関西空港に向かった。往復10,000円の激安航空券をゲットして、韓国の王桜(ソメイヨシ)を見物がてら韓国 全羅南道 順天 松廣寺 天子庵の樹齢800年のビャクシン(雙香樹)を訪ねた。
 釜山 金海国際空港から鉄道、バスを乗り継いで夜の7時に韓国南部の小都市 順天に着いた。予約したホテルは繁華街から離れた山の中の1軒家、タクシーの運転手も名前すら知らない宿泊施設、名前こそホテルだが建物の装いは立派なモーテルである。受付カウンターも双方の顔が見えないように30cm四方の小さな窓。カギとアメニティ袋を貰い照明の薄暗い部屋へ、ダブルベットと広い浴室、男女用の浴着、極めつけはアメニティ袋の中の洗面具に避妊具、ジェル等、六十路をとぼとぼ歩く老爺の一人旅には無縁でしょう・・・。    韓国で安宿は何度も宿泊したが、このようなサービスは初体験、翌日の田舎町のモーテルも同じサービスが、因みに1泊4,750円だった。

 

 

 未だ見ぬ老樹への思いと逢瀬部屋に挟まれ悶々と夜明けを。翌早朝、韓国の樹木医の案内でビャクシンがある天子庵の参道入口まで行く。参道入口からビャクシンがある天子庵本殿までは急勾配の山道を15分ほど歩く。参道の桜は散り、足下にはスミレ、カタクリなどが生えていた。心地よい足の疲れを感じた頃に天子庵に着く。本殿より一段高い小さな庵の横に異様な姿をしたビャクシンがある。このビャクシンは今から800年ほど前に中国から帰国途中の高僧二人が突いていた杖を挿したものが根を降ろし成長したもので雙香樹(二つの香木)と言われている。樹幹の大半の樹皮がなく、残る樹皮も飴の棒を捻たように幹方向に捩じれ上がっている。

 

 

 この樹木は天然記念物第88号に指定され、探訪客も多く、長年の風雪に耐えかね樹勢が弱り、韓国樹木医第1号の姜銓隃(カン・ジョニュ)氏が1980年、1991年の二度に渡り治療したビャクシンでもある。樹勢は良いとは言えないが筋肉隆々とした武者が仁王立ちしている様は圧巻である。

 本殿より一段高い場所に生えており、石積みされた時に覆土されたのだろう根張りが見えない。1991年に外科手術し充填されたウレタンと人工樹皮の一部が離脱していた。しかし、韓国の人工樹皮技術はどの事例を見ても上手に処理している。

 小豆島にある特別天然記念物 宝生院のシンパク(樹齢1500年)然り、ビャクシンの特質なのか僅かな樹皮部分で養水分の流通が行われ樹体を維持する生命力の力強さと不思議さに感嘆させられる。

 

 

 

松廣寺のビャクシン
雙香樹
 韓国天然記念物 第88号
 樹種名:ビャクシン
     Juniperus chinensis
 樹高:12.0m
 根元周囲:3.80m、3.30m
 胸高周囲:4.10m、3.30m
 樹冠幅:東西方向        7.40m
     南北方向        6.50m
 樹齢:約800年
 由来:高麗時代、普照国師と湛堂国師が中国から帰国する時に突いていた杖を刺したものが根付いたと伝わっており、松廣寺の三大宝物の一つとされている。

 

 

 

 

 

 因みに、韓国最初の樹木医である姜銓隃(カン・ジョニュ)氏はソウルで樹木病院を開業し、韓国の天然記念物を何本も治療した、おじいさん樹木医として名が知れている。

 「おじいさん!木が痛いって」という小学生低学年用の教材本に、その生い立ちと樹木医となり樹木病院を開業し、全国各地の老巨樹を治療した事例が紹介されている。

2014年4月15日
日韓樹木文化・老古樹研究協会
浅川 充

On 4月 27th, 2014, posted in: 樹木医アラカルト, 緑と樹木について by KO
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