龍もなぎ倒し、王命さえ奪う台風

 今年ほど台風が数多く発生し、甚大な被害をもたらしたことは前例にないだろう。伊豆大島の山を崩壊させた10月16日の台風26号、11月8日、フィリッピンでの風速90米を越える強風で数千人の尊い命と甚大な爪痕を残した台風30号。地球温暖化による気候環境変化による影響は確実に大きくなっている。

 さて、昨年 お隣韓国で台風の強風により樹齢600年の老樹が倒されたことを知る人は少ないだろう。
 韓国 忠清北道 槐山(クェサン)郡三松里にあったアカマツ 天然記念物第290号 (高さ13.5m、胸高周囲4.91m、樹冠幅東西方向14.92m、南北方向19.9m)は、その威風から王松と呼ばれ、また幹が捻じれる様がまさに龍が空に舞い上がる姿に見え「龍松」とも呼ばれ地域の人に尊ばれ親しまれていた。

 

 

 この王松が昨年8月28日、台風15号の韓国本土直撃により、韓国の中央山間部に位置する槐山地域にも強風を伴って通過した。平素は台風の影響も予想もしない地域が強い風に吹かれ、この龍松も強風に弄ばれ根元から折れ倒れた。倒れた消息を聞いた韓国文化財庁と槐山郡は樹木医など専門家により救命措置を施したが1年間の薬石の功なく、この11月6日枯死したと発表した。

 

 

 倒れた要因は根株の腐朽が酷く、巨体を支持する根も少なかったところに地上部が強風で弄ばれたためと考えられる。倒木後の10月末に李承齋ソウル樹木病院院長に案内され「お見舞い」に行くが既に瀕死の状態であった。

 

(2012年10月26日、倒木した王松は根株を覆土、幹は緑化テープで養生されていた)

(2012年10月26日、倒木した王松は根株を覆土、幹は緑化テープで養生されていた)

 

 台風の襲来がなければ、1000年と言わずともあと100年くらいは優雅な龍の舞を楽しめたのではないかと、合掌し槐山 三松里を後にした。災害を回避するため私たちは何を成すべきかを考えさせられた、この1年だった。
日韓樹木文化・老巨樹研究協会 浅川

On 11月 24th, 2013, posted in: 樹木医アラカルト, 緑と樹木について by KO
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