台湾で植栽用客土として販売している土壌を分析しました。主に台湾随一の園芸の町「田尾」と言うところで分けてもらった土壌ですが、他に彰化縣と言うところの海際の造成地で採取した土壌や、台北市近くの陽明山付近で採取された土壌が含まれています。
 台湾でも日本と同様の分析が可能ですが、有効水分保持量だけは測定できません。有効水分値は、土壌に吸着される水のポテンシャルを表すもので含水率や吸水率とは異なります。実際に植物体に供給可能な土壌水分量を示すもので、西日本のマサ土など、保水性の乏しい土壌を調べる際には重要な分析項目となります。しかし、シルトや粘土分の多い台湾においては保水量が高い土壌のため、有効水分保持量を測定する必要が無いのかもしれません。幾つかの大学や分析機関を回り確かめましたが、どこも有効水分保持量を測定してくれるところはありませんでした。

■台湾の植栽用土壌分析
 次の表は国立中興大学で分析頂いた結果を日本造園学会の評価基準に照らし合わせて評価した一覧です。客土材といっても結構基準を満たしていない土壌が販売されています。台湾における植栽用客土材の大半は、工事で出た残土を再利用しているようですから、基準を満たさないものが出回っていても不思議ではありません。pHなどはチェックされているようですが、それでもアルカリ性を示す土壌が客土材として販売されているようです。自然界の台湾の土壌は日本と同様に弱酸性を示しますから、残土にセメントなどのアルカリ物質が混合されたのかもしれません。

 

*腐植含量は有機質÷係数1.72で算出。%=g/kgx10で換算。

*腐植含量は有機質÷係数1.72で算出。%=g/kgx10で換算。

 

 分析した土壌で共通している点は、土壌の基本的性質を知る上で重要な分析項目である土性(粒径組成)が、海浜埋立地で採取した彰化縣の土壌以外は、いずれも粘性が高いという点です。田尾で入手した土壌はいずれもSiC (シルト質壌土)かSiCL(シルト質埴壌土)とシルト分の多い土壌だとわかります。台北市近くの陽明山で採取された客土はHC(重粘土)と極めて粘土分が多い土壌です。シルトや粘土分が多い土壌は、含水量が多くべたべたの土となります。陽明山の土壌は粘土細工や陶器を作るのに適した粘土含有量となります。
 下の三角座標にそれぞれの分析値をプロットしました。網掛けしてある部分が、日本造園学会が示す客土材の品質基準として適合している範囲です。海際で採取した彰化縣の土壌しか適合せず、他の土はいずれもシルトと粘土が多い、ベタベタとした通気性や透水性が悪い土壌だとわかります。
 ですから、台湾における植栽シーンでは、まずは土壌通気性と透水性や排水性の改良が重要となる訳です。

 

 

 次号では、台湾の土壌改良材と植栽基盤整備手法についてご報告します。
 笠松滋久