前回に引き続き中部地方の一本桜の紹介です。長野県から岐阜県に移動し、5月5日に高山市一之宮町にある「臥龍桜」を見に行きました。もう葉桜であることはわかっていましたが、有名な名木なので素通りはできません。
 「臥龍桜」の名前の由来は、樹形が龍の臥した姿に似ていることから名づけられました。

 

臥龍桜

臥龍桜

 

 樹種はエドヒガンで、枝張り30m、樹高20m、樹齢約1,100年余りを数える、日本を代表する桜の一つです。枝が垂れて地面につき、そこから発根しましたが、母樹と繋がっていた枝は枯れてしまったのでそれからは2株となっています。
 昭和48年に国の天然記念物に指定されました。平成のはじめに台風などの被害を受け枯死寸前でしたが、大規模な治療回復処置により、現在は樹勢も以前のように元気になっています。

 

二つに分かれた臥龍桜

二つに分かれた臥龍桜

 

 続きまして高山市荘川町にある「荘川桜」を見に行きました。
 「荘川桜」は、皆さん御存知のとおり、御母衣ダム建設により湖底に沈む運命にあった2本の桜を昭和35年にダム湖畔に移植したものです。その移植を指導した人が、大阪出身の笹部新太郎で桜の研究に一生を捧げた人物です。移植当時は枝を切り落とし丸坊主の姿だったそうですが、50年余りたった今は、枝を大きく広げ花を一杯つけていました。

 

南側から見た荘川桜

南側から見た荘川桜

 

 樹種は2本ともアズマヒガンで、南側の樹は、幹周り4.9m、樹高21mで、北側の樹は、幹周り5.9m、樹高20mで、両樹とも樹齢約400年を数える巨木です。
 荘川桜から採った種子から実生苗を養成し、全国の学校や公共施設に配付されていて、今まで1,000本以上の荘川桜の子供が植樹されたそうです。

 

北側から見た荘川桜

北側から見た荘川桜

 

 時間があったので、郡上市白鳥町にある「石徹白の大杉」を目指しました。「荘川桜」から車で1時間余り走ると「白山中居神社」に着きます。「石徹白の大杉」はこの神社の御神木になっていて、神社からさらに車で7kmも細い道を走らないと見ることができません。対向車が来ないように祈りながらやっと白山の登山口に着きました。そこから石の階段を420段登るとやっと「石徹白の大杉」に到着です。
 幹は途中で折れて、ずんぐりとした特異な樹形をしています。これが途中で折れてなかったら、さぞかし大きい木であったろうと想像されます。

 

石徹白の大杉

石徹白の大杉

 

 幹周り14m、樹高24m、樹齢約1,800年で,縄文杉が発見されるまでは、日本有数のスギの巨木だったそうです。1957年に国の特別天然記念物に指定されています。
 現在、幹の半分は枯れ、少し弱っている感じもしますが、登山道の入り口に立ち、白山信仰のシンボルとして、これからも多くの登山者を見守っていてほしいと思う次第です。

 

大杉の幹

大杉の幹

 

 ところで、一本桜の訪問記もこれでおしまいです。東北にも行く予定でしたが、開花が遅れ日程的に無理となり、またの機会とします。今年は天候にも恵まれ非常にラッキーでした。 
   真田 俊秀