昨年(平成26年)の冬に韓国からの客人を案内して和歌山の高野山に詣でた。古刹の石庭を眺めながら精進料理を食した。大食漢の韓国人には味が薄く量の少ない食事と空虚で石のみを配した庭が印象に残ったようであった。次の機会には京都の石庭を巡ろうと真冬の高野山を離れた。
 この冬、約束を果たすべく京都の著名な石庭を巡る計画を立てたが、残念ながら火急な用事で来訪が叶わず案内することが出来なくなった。折角予約したホテルなどをキャンセルするのも勿体ないとピンチヒッターの妻を伴い、冬の京都「石庭巡り小旅行」に出かけた。
 京都大学の近くにある重森三鈴石庭美術館は事前予約が必要で、当日は私たち含めて3組10人足らずの見学者、重森三鈴氏か自ら著した書と画で装われた客間を案内され、客間の前に広がる石組みの庭の説明を受けた。石組みの知識を持ち合わせていない拙者にも深閑静寂な空気が漂う空間に身をおくことに悦を覚えた。
 語り口の静かな亭主(美術館館長)の案内を聞き、石庭、茶室、書、画を見学し現代美術家 重森三鈴氏の作品の神髄に触れた。
 美術館を辞した後、京大前からタクシーで龍安寺に向かう。北野天満宮を過ぎたあたりから雪が舞い始め冬の京都の風情がより一層濃くなってきた。観光客の少ない龍安寺、15個の石を配した石庭は雪を頂きながら何かを語っているようで先の石庭にない趣であった。
 龍安寺から南に下ると等持院がある。閉門間じかに門を潜る。龍安寺の石庭と趣が違う石庭と石組みの庭を見学し、京(今日)の石庭巡りの幕を閉じる。
 朝が空けると京の町は白く雪化粧、鴨川を東に渡り祇園花見小路の家並を過ぎると石庭巡りの最終地点 建仁寺がある。早朝であったので日曜日にも拘らず参詣者、見学者の足数も少ない。昨日から4つ目の石庭、やや過食、消化不良気味、それでも方丈前の石庭、中庭の石組みを満喫する。冬の古都の石庭は樹木の彩も絶え寂しいが、予期もせぬ雪の演出で一味も二味も違う雰囲気を楽しめた。次は花爛漫する春の石庭を訪ねてみたい。
 日韓樹木文化・老巨樹研究会 代表

 

重森三鈴庭園美術館入口より望む招喜庵

重森三鈴庭園美術館入口より望む招喜庵

 

庭園美術館入口より望む前庭

庭園美術館入口より望む前庭

 

客間からのビューポイント

客間からのビューポイント

 

青石と苔を配した石庭

青石と苔を配した石庭

 

茶室にある三鈴自作の襖絵と書

茶室にある三鈴自作の襖絵と書

 

雪に煙る龍安寺石庭

雪に煙る龍安寺石庭

 

寒肥の時期、庭師が丁寧に施肥作業

寒肥の時期、庭師が丁寧に施肥作業

 

等持院の石庭

等持院の石庭

 

等持院の裏庭の石組み

等持院の裏庭の石組み

 

白く雪化粧した建仁寺 望闕楼

白く雪化粧した建仁寺 望闕楼

 

方丈前の石庭

方丈前の石庭

 

〇△□乃庭 禅宗の四大思想(地水火風)□地〇水△火で象徴する。

〇△□乃庭 禅宗の四大思想(地水火風)□地〇水△火で象徴する。

 

本坊中庭の潮音庭

本坊中庭の潮音庭