コナラの枯れた状態(高槻市原)H22年9月

コナラの枯れた状態(高槻市原)H22年9月

 アラカシは穿孔被害を受けても枯れにくく発見が難しいため、継続的にカシナガの発生源となっています。これは他の樹種は穿孔が辺材で止まってしまうものが、アラカシの場合は心材まで穿孔できるため「心材化」が進みにくく、枯死しにくいものと考えられています。
 カシナガは非常に社会性を持った昆虫で、キクイムシのなかまの中では菌食性キクイムシと呼んでいて、雌の背中には菌を運搬する特殊な器官を持っています。
また、カシナガは糸状菌(カビ)を媒介し、それを食べていると言われていますが、実際に食べているのは酵母で、カビで樹木を殺して、酵母を栽培し、酵母を食べていることが観察で確認されています。
 生活環は春先にまず雄が衰弱木を見つけて穿孔します。そして、フェロモンで雌を呼び寄せます。(集合フェロモンで、同じ木に他の雄も呼び寄せます)
雌はオスのあけた穴に入ってくるとき鳴き声を出しますが、オスはこの声で同種の雌であることを確認して、カップルになります。そしてすぐに交尾し産卵し孵化した幼虫はワーカー(働き手)として、親の手伝いをします。
 たとえば、カビや酵母を孔道内で移動させたり、母親の生んだ卵を孔道の奥に運んだり、また、乳液を分泌して、幼虫同士で栄養を交換しあったり、発達の遅い幼虫を大きくなった幼虫が助けたりするそうです。(何と家族愛にあふれた虫だろうか。それに比べて我が家は……………。)
このようにして、1つの孔の一家(核家族)で1年間に500から600の成虫が増産され、1本の木に100孔があれば単純計算すれば50,000から60,000の虫が発生することになります。(何と多産であることか。)
フラスが確認されたコナラ(高槻市梶山)H21年9月

フラスが確認されたコナラ(高槻市梶山)H21年9月

羽化は6月ごろから始まり、6月下旬から7月がピークで、10月ごろまで続きますが、フラス(穿孔から排出されるおがくず)の発生もそのころがいちばん多いようです。そして冬季は穿孔内部で成虫で越冬します。
 カシナガの駆除については、秋から冬にかけて侵入した被害木に樹幹注入をするか、被害木を伐採しシートを被せてくん蒸する方法などがあります。
予防としては、樹皮に粘着剤を塗布したり、幹にシートを巻くなどの方法がありますが、手間と費用のかかる山間部では、なかなか実施が困難なのが現状です。
吹田市の万博公園でも今年、被害が確認されていますし、今後は街中でも被害が拡がる可能性があるので、注意して見守る必要があると思います。

真田 俊秀