歳を重ねると、物忘れがひどくなってくる。誰しも感じる事ではないだろうか?我がN造園の先代親方である義父も例外ではない。
財布や携帯電話を忘れてくるなんて事は、しょっちゅうだ。仕事の帰りに家の鍵がないと騒ぎだし、帰ってみると玄関に刺さっていた・・・という話も、1度や2度ではない。
 「この前、仕事が終わって家に帰ったらな、玄関の扉が開いとったんや!いやぁ、びっくりしたで!ひゃっひゃっひゃっひゃっ!」
 義父の家の玄関は引き戸タイプである。どうやら、朝出かける時に閉め忘れて、一日中全開だったらしい。義父はそれを少しも気にする様子はなく、全く他人事みたいに大笑いしていた。さすがだ・・・。
 しかし、私もあまり人の事を笑ってはいられない。
 最近、物忘れを自覚する事が多くなってきたのである。ただ、工夫や対策をする事によって、物忘れによる失敗を軽減する事ができる。たとえば、置いた場所を忘れてしまって物を失くしてしまう・・・などの場合、置き場所を決めておくようにすれば、失くすことはない。私は、特に仕事の道具などは必ず決めた場所に置くようにしている。しかしそれが面倒で、ついそこらへんに置いてしまう人は、よく物を失くすようだ。義父が、典型的なこのタイプなのである。
 義父は、「わざとか?」と思うくらい、いろんな場所に物を置いてしまう。そして、しょっちゅう失くしては、私に在り処を尋ねてくる。道具ならば、だいたいありそうな場所を答えるのだが、
 「ワシの地下足袋しらんか?」と、聞かれると、
 「人の履きもんまで知りませんわ・・・。」と、言いたくなる。
 そして、そういう場合義父はよほど面倒くさいのか、ろくに探しもせずに新しいのを買ってきてしまう。先日、倉庫の大掃除をしていたら、いろんな場所から義父の地下足袋が5足も出てきた。それだけではない。ハサミなどに使用する潤滑油は、使いかけや新品など、合わせて7缶見つかった・・・。

 

 

 ただ、すぐに買ってくるのは、失くした場合だけではない。道具の調子が悪くなっても、すぐに「アカンわ。新しいのん買うてきたろか。」となる。そうなのだ。義父は、物を買うのがとても好きなのである。おかげで、ウチには道具類が非常に多い。植木の刈込に使用する「バリカン」などは6台もある。そんなにいらんやろ?

 

 

 これでは、経費がいくらあっても足らない。しかし、ご本人は
「やっぱり新品は、よう切れるで!ひゃっひゃっひゃっひゃっ!」と言って、ご満悦である。
 まあ道具がそろっているのは便利だし、義父が機嫌よく仕事をしてくれるのはありがたいので、目をつぶることにしている。
 しかし、私にとって本当の脅威は、義父の娘である私の妻が義父にそっくりだということである・・・。マジで恐ろしい・・・。

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